※先に「作品」レビューの基本方針を必ずお読みください。
※あくまで私の主観にもとづくものです。またべた褒めはしませんのでご注意ください。
負けちゃったね。
負けると思ってたけど、本当に負けちゃうと寂しいね。
だって、城徳野球部3年生の、そして監督田茂青志の夏はこれで終わりだ。
なにやらとんとんとんと武宮高校に勝った第9話。(9話の感想はこれで終わりです)
まさかこの先もこんな感じで勝っちゃうの?だって今度の相手は堂学だよ?武宮でもちょっと「へえ!」と思ってたのにあり得なくない?
……と思っていたら、第10話でシビアな現実をきちんと描いてくれました。
うん、そりゃ堂学が相手の試合には負けるよね。
だって向こうはいろんなものを犠牲にして死ぬほど練習してきてる。それが彼らのプライドの一端になってる。
第5話感想に書いた、青志が城徳野球部員に言った
「どんなスタイルでどんな野球をやりたいのか、という“考え方”に対する自信、それが『プライド』なんだよ。
はじめからプライドを持ってる奴だけが勝てるんだよ」
……堂学の野球部員はきちんとこれに当てはまってるんだもん。
あそこまでの強豪校は「勝ち続けてる」ことだけをベースに自分たちの野球にプライドをもってるわけじゃない。
青志の言うようなまっとうな「自分たちの野球」に対するプライドをちゃんと持ってる。
同じ高校生、うん、もちろんそう。だからイメージどおりの「完璧な野球」にならなかったらときにメンタルが揺らぐこともあるさ。
だけど超えられない壁はある。それが現実。
その壁を高くするために彼らは毎日血の滲むような努力をしてるんだもん。
その一方で、城徳野球部がきちんと「自分たちの野球をやる」というプライドを持って試合に臨んでやりきった、これもまた現実。
試合に負けてこんなにも悔しがって泣く野球部員を、3ヶ月前が誰も想像できなかった。
「俺たちは俺たちの野球でプライドをもってやりきったんだ。
だから次こそは、……次は、勝て。必ず勝ってくれ。」
でも、その「次」には、青志はいないよね?
解散、と言い残して去った後、ドアにもたれて膝を崩して、帽子で顔を隠しながら嗚咽する青志が切ないよ。
※
※
※
この第10話、これまでのなかでいちばんバランスのいい回だった気がしました。
前半野球部員たちの軽快なやりとりやコネタで魅せて、面倒くさい田茂青志哲学(笑)で魅せて、甘酸っぱい青春や野球の試合でも魅せて。
(そのぶん私の愛したマニアックさが薄れてしまった感じがあるけれど、それは私の好みなので)
個人的には田茂青志がちゃんと「帰ってきた」ことが嬉しかったなあ。
トネリコにこれまでの自分の発言集(?)を見せられ、「これは監督の哲学ですか?」という問いに
「あいつらと関わる中であいつらに全部言わされただけですよ」
……いやいや、間違いなく青志的哲学という側面もあるだろう青志。
だけどそれを素直に言わない。
研究室に戻るために自分がいなくても大丈夫な城徳野球部にしようとしているのに、そうなってきてることにうっかり寂しくなる。
野球部を実験対象として見ていたはずなのに(その側面は今もあるだろうけど)、その実験対象に感情移入してしまう。
嗚呼この二面性こそが田茂青志だよ!おかえり青志!!
あと登場人物の台詞回しが私の好みな感じに戻ってたのも嬉しかったです。
以下つらつらと抜粋。
・青志→野球部員
「つまり、負を蔓延させればいいんだ、ほんの些細な負を堂学ナインに蔓延させろ、負で埋め尽くせ!」
(負を蔓延……教師の言葉とは思えない 爆)
・青志→赤岩
「お前はなんと、打たれ続けるのを許されたピッチャーなんだぞ。打たれ続けてるのに平然な顔をしてるピッチャーはそれはそれで異常だろ」
(何気にひどい)(でもこれが後々本当に堂学の脅威となるとは 笑)
・亀沢→野球部員
「いいか、一度しか言わないからよく聞け。……明日は亀沢製作所の納品日だ。明日は亀沢製作所の納品日だ」
(もうこれ「つっこんでください」台詞だよね 笑)
・白尾→赤岩
「ゆずたるみ!」
(あー甘酸っぱ♪青春♪)
・志方→牛丸
「イメージといっても1種類じゃないんだ、例えば僕は樽見さんから受けるであろう罵詈雑言を事前にイメージしてるんだよ」
(志方……筋金入りっすね……)
・堂学の監督→楓
「あなたがた城徳の関係者はここが公園かなにかだと勘違いしていませんか?」
(してるかもしれませんすいません監督)
・青志→野球部員
「あいつらからみた城徳は『白尾とそのゆかいな仲間たち』だ」
(言葉のチョイスが的確です……)
・堂学の監督→光安兄
「俺にあんな投手(=赤岩)を褒めさせるな!!」
(打たれ続けてるのに平然としてるピッチャーは異常だということが証明されましたよ!田茂先生!)
こうやって書いてて、私、やっぱり倉本氏の言葉が好きなんだなってしみじみと思いました。
来週で終わりだなんて信じられないなあ。
公式サイトの第11話(最終回)のストーリーは「Coming soon」。……面白かったー!!って思える最後を迎えることを楽しみにしてます。