北の大地、かなり苦労してこの「ぴあ」を手に入れました(苦笑)。
だってもともと取扱い冊数が少ないんだもんさ!
でも苦労したかいがあったなあって思ってます。
嵐さん特集、タイトルは「僕たちの居場所」。テキストは上甲氏です。
これが最後の「ぴあ」での掲載になるんですね。
上甲氏のテキスト自体は「SODA」などでもお目にかかれるかもしれないけれども、やっぱりテイストが違う。
姿勢を正して(それはちょっと嘘)、心して読もうと思いました。
読んだ方はわかるかと思いますが、半分近く座談会方式です。
そして語った内容は、……実はほぼ、ツアーパンフでのメンバー単独インタビューの抜粋だったりする。
(東京ドームで先にツアーパンフを入手されてるかたはすぐ気づいたかと思います)
けれど、単独で語るのと座談会になるのとでは、印象が全然違いました。
この記事では、翔さんとニノの言葉に焦点を当てたいと思います。
私は以前から、嵐の「知性担当」ツートップは、一貫して翔さんとニノだと思っていて。
しかも、質も、向かっている方向も、正反対の知性。
今回の「ぴあ」を読んで、あらためてやっぱりそうなんだと(ひとり勝手に)納得した部分がありました。
まず、アルバムについてのインタビューで、震災について問われて出た言葉。
「今回みたいな有事に際して、エンタテインメントというもの、引いては自分たちの仕事というものに関しては……極論を言うと“何もできない”と思ってるんだよね」(翔さん)
「(何もできないことに)無力感……は感じなかったね。確かに僕らの仕事って必ずしも一番に必要なものではないかもしれないけど、それを仕事にしたくてジャニーズ事務所という会社は立ち上げられたと思うので。無力感を感じる理由は、ない気がします」(ニノ)
ものっそい対照的なふたりの言葉。
今回は、意図的なのかな?と思うほど、翔さんとニノの言葉が交互に来ていたテキストで。
だからそれぞれ単独で読むよりも、ふたりの好対照ぶりが際立ちました。
翔さんは、おそらくエンタテインメントの限界というか、無力感をおぼえているんじゃないかと思うの。
震災直後はもちろん、きっと今でも少しは。
だから翔さん単独での被災地訪問は、報道という形をとっているんじゃないかなあって。
いっぽうのニノは、きっとエンタテインメントというものに希望をもってる。
たとえいちばんに必要なものじゃなくっても、何もできなくなんかない、人の心に何かを訴えかける、とを信じてる。
だからニノ単独での被災地訪問は、そのとき彼のなかでの最大のエンタテインメント、「GANTZ」の舞台挨拶、という形となった。
あくまでも個人的視点ですが、私はそうとらえました。
そしてその感じかたは、おそらくどちらも間違ってない。ただ視点が違うだけで。
そして、それを受けてのCD制作についての言葉。
「今回も、だからこその“いつも通り”。その枠をはみ出ることはできないんだよね」(翔さん)
「まあ“いつも通り”といってもCDを作ることやコンサートをやれることが当たり前とは決して思っていないから、“いつも通り”という表現は要らないんだけどね」(ニノ)
ここ、とっても興味深かったです。
こう言葉が並ぶと、ほんとに真逆なのがはっきりわかる気がするの、このふたりのベクトルが。
翔さんは、いい意味でいつも上を向いている。自分たちが目指すべきところを見ている。
その気持ちが、“いつも通り”という言葉に現れる。
あくまで見ているのは上だから、「現在できていること=いつも」という認識になるんだと思う(無自覚かもしれないけれど)。
だけどニノは、これもいい意味で、いつも足元に目を向けている。
今出来ていることがこれからも出来るとは限らない、そういう危機感をつねに抱いてる。
だからこの人の目標はいつも「現状維持」。それがいちばんむずかしいことだと本気で思ってて、だから目標になり得るんだと思う。
「現状維持」という言葉は、翔さんの口から出るのとニノの口から出るのとでは、きっと意味合いが違ってる。
そんなことをつらつらと考えました。
そしてこういう真逆のベクトルの「知性担当」がグループのなかにいることで、きっと嵐は今もいいバランスを保ってるんだろうな。
あらためて、しみじみそう思いました。
「知性担当」による、野心とブレーキとの絶妙な組み合わせ。
(だから「ニッポンの嵐」で、翔さんが農業、ニノがエンタテインメントを選んだのって、もの凄くわかりやすい)
最後に、上甲氏のこのテキスト、私の過去記事と(勝手に)リンクしたような気がして嬉しくなりました。
「震災のような大きな出来事があろうとなかろうと彼らのファンの中には、昨日悲しみにぶつかった人や、今日悩みのどん底にいる人が含まれているかもしれないことに変わりはない。けれども嵐の番組や新譜が待っていれば、少しだけ歩ける。少しだけ明日に目が行く」
うん、私もほんとうにそう思います。
エンタテインメントでごはんが食べられるわけじゃない。だけどエンタテインメントが少しだけ背中を押してくれることもある。
それがきっと、嵐さんが私たちに見せてくれる、「Beautiful World」。そんな気がします。